事件名 |
離婚請求 |
争 点 |
精神病を理由とする離婚請求の可否 |
判 旨 |
民法770条1項4号と同条2項は、単に夫婦の一方が不治の精神病にかかった一事をもって直ちに離婚の請求を理由ありとするものと解すべきでなく、たとえかかる場合においても、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活等についてできるかぎりの具体的方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない法意であると解すべきであることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和28年(オ)第1389号、同33年7月25日第二小法廷判決、民集一二巻一二号一八二三頁)。 |
具体的事案検討 |
Dは、婚姻当初から性格が変っていて異常の行動をし、人嫌いで近所の人ともつきあわず、被上告人の店の従業員とも打ちとけず、店の仕事に無関心で全く協力しなかったのであり、そして、昭和32年12月21日頃から上告人である実家の許に別居し、そこから入院したが、Dの実家は、被上告人が支出をしなければDの療養費に事欠くような資産状態ではなく、他方、被上告人は、Dのため十分な療養費を支出できる程に生活に余裕はないにもかかわらず、Dの過去の療養費については、昭和40年4月5日上告人との間で、Dが発病した昭和33年4月6日以降の入院料、治療費および雑費として金30万円を上告人に分割して支払う旨の示談をし、即日15万円を支払い、残額をも昭和41年1月末日までの間に約定どおり全額支払い、上告人においても異議なくこれを受領しており、その将来の療養費については、本訴が第二審に係属してから後裁判所の試みた和解において、自己の資力で可能な範囲の支払をなす意思のあることを表明しており、被上告人とDの間の長女Eは被上告人が出生当時から引き続き養育していることは、原審の適法に確定したところである。そして、これら諸般の事情は、前記判例にいう婚姻関係の廃絶を不相当として離婚の請求を許すべきでないとの離婚障害事由の不存在を意味し、右諸般の事情その他原審の認定した一切の事情を斟酌考慮しても、前示Dの病状にかかわらず、被上告人とDの婚姻の継続を相当と認める場合にはあたらないものというべきであるから、被上告人の民法770条1項4号に基づく離婚の請求を認容した原判決は正当として是認することができる。 |
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